厚生労働省では例年「インターネット販売製品の買上調査」を実施し、その結果をウェブサイトで公表しています。これは、「個人輸入により国内に流入する偽造医薬品等の状況を把握するため、海外のインターネットサイトで日本国内向けに販売されている海外製医薬品・健康食品」を対象としているものです。特に滋養強壮や痩身効果などを謳う商品について、この検査の結果、シルデナフィルやタダラフィルなどの医薬品成分が含まれていることが判明したケースが少なくありません。
シルデナフィルやタダラフィルは、通常処方箋の必要なED治療薬として用いられる医薬品に含まれている医薬品成分で、いわゆる「健康食品」に入っていてはならない成分です。しかし、こうした成分が含まれていることは、製品の成分表示にも記載されていません。買い上げ調査が行われて、成分検査の結果、初めて明らかになることです。場合によっては、通常の医薬品に含まれているよりも高い濃度で医薬品成分が含まれていることもあり、その事実を知らずに服用してしまう消費者への健康リスクは大変高いものです。そのため、厚生労働省の調査結果の発表資料においても、これらの製品は健康被害のおそれがあるため、直ちに使用を中止すること、また健康被害が疑われる場合には、速やかに医療機関を受診すること、という勧告が添えられています。
消費者の知らないところで医薬品成分を含んでいる「健康食品」は、必ずカプセルや錠剤タイプのサプリメントであるとは限りません。「男性のためのコーヒー」と宣伝されたコーヒー飲料に、医薬品成分が含まれていることが発覚したケースもあります。「滋養強壮」を謳う健康食品は数多くありますが、特に「ED治療薬と同等の効果が得られる」というような宣伝の仕方をしている商品を見たら、「ED治療薬と同等の成分が入っている可能性があるのではないか」と疑ってかかるべきでしょう。
インターネット上にはこうした商品が出回っていますが、特に目につくのは海外から「個人輸入」と称して、海外製の「健康食品」を直接日本の消費者の元へ商品を発送しますと謳うウェブサイトです。オンライン販売を行う事業者には、特定商取引法で連絡先などの表示が義務付けられていますが、このようなウェブサイトは大抵の場合、連絡先が海外だったり、住所の表記がなかったりします。厚生労働省の買い上げ調査でも、特に「個人輸入」と指定して海外のウェブサイトを対象としていることが窺われますが、その背景にはこのような事情も考えられます。
「個人輸入」とは、単に消費者が、商品を直接海外から買うという形式だけの問題ではありません。この販売形態においては、本来であれば正式な手続と経路で流通させるべき商品を、「個人輸入」という名の下に直接消費者に購入させることにより、そこに付随する様々なリスクと責任が消費者に転嫁されてしまっているという大きな問題が存在しています。そのために、安全性や有効性が国内できちんと確認されていない医薬品や健康食品が、正式なチェックを受けることなく国内に流通してしまい、結果として消費者へ予期しない健康被害を及ぼす可能性が、事実として存在することが、厚生労働省の調査等によって裏付けられています。
シルデナフィルやタダラフィルといった、処方箋の必要な医薬品成分を含んだ「健康食品」は、「未承認の医薬品」とみなされます。そして、「未承認医薬品」をウェブサイトなどで広告することは、薬機法で禁止されています。ECサイトやオークションでこのような商品の広告販売が行われた場合、そのサイトやオークションの運営者に責任が問われる可能性もあります。また、ペイメントプロバイダにとってはカードブランドルール違反のリスクも伴っています。レジットスクリプトは未承認医薬品や医薬品成分を含む健康食品などを不正に販売する事業者を監視するモニタリング業務を提供しています。